はじめてのオナニーは床オナニーだった。
あれは小学校にあがってすぐの頃だった。
当時は自分のしている方法が「床オナニー」という「名前のある行為」だとは知らなかった。
オナニーという言葉や概念すら知らなかった。この行為に何の意味があるのかは分からなかったが子供心にもいいことではないような気がして誰にも聞けなかった。
私には年の離れた姉が1人、2つ上の兄が1人いた。
姉は自分の部屋を持っていたから、私は兄と2人で一緒に寝ていた。
夜になり兄が寝てしまったのを寝息で確認すると静かにうつぶせになり、パジャマのズボンと下着を脱いでおちんちんを布団にこすりつける。気持ちいい、というよりなんだかおなかのあたりがふわふわするような、頭がボーっとするような、不思議な感覚が押し寄せてくる。気持ちよさが続くうちにおちんちんがビクンビクンとなって頂点を超えていく感覚がある。そこでフィニッシュだ。射精はしなかった。だから布団の中でオナニーしてもシーツを汚す心配がない。
やがて姉が大学に入り1人暮らしをするために家を出て、兄と私のそれぞれが個室をもらえるようになると私のオナニーは毎晩の楽しみになった。誰にもばれず邪魔されない世界で快楽にひたるようになった。
小学校5年になった頃、布団におちんちんをこすりつけているといつものようにおちんちんがビクンビクンとなる感覚がやってきた。「来る!」と思った瞬間、白い液体がおちんちんから飛び出してきた。
「な、なんだよ~これ!!」
ペニスをこすりすぎて血が出たのかと焦ったが血の色ではない。これって何?もしかしておちんちんの中のなにかの成分が出ちゃった?それとも変なことをしすぎて病気になってしまったのか?とも思った。
今思えば単に「精通」という女性にとっての初潮のようなもので体内で精子が作られるようになったわけで大人になったと喜ぶべきことなのだろうけど、その時は意味が分からず怖くなった。とうとう取り返しのつかないことになってしまったのかもしれない、とすら思った。
シーツを汚してしまったことが母にばれたらなんて説明したらいいのか分からない。なんとかティッシュで拭きとった。汚れたティッシュはトイレに持っていき、流した。それからは布団の中でするのが怖くなったがある時新しい方法を発明した。下着のパンツの中にティッシュをあらかじめ入れておいてパンツを履いたままでシーツにこすりつけるという方法だ。これなら例の変な白い液体が出ても後の処置は簡単で誰かにバレることもない。
自分がいいことをしているのではないだろう、とずっと思っていた。決して人にばれてはいけない。家族にも友達にも。こんなことをしているのはきっと自分だけだろう、バレれば馬鹿にされたり気味悪がられて嫌われてしまうに違いない。
その頃の私は「いい子」だった。学校のテストではいつも100点に近かったし、親や先生の言いつけをよく守り、学校から帰るとお皿を洗ったり掃除の手伝いもすすんでやった。道端で10円を拾って交番に届けたこともある。交差点でのろのろと歩いていた見知らぬおばあちゃんの荷物を持って手をひいて横断歩道を渡らせてあげたこともある。父も母も末っ子の私を「かわいい、いい子だ」と言ってくれた。
私は自分が本当は可愛い子供なんかではなくいやらしい人間だということを知っていた。だから余計に「いい子」の仮面をかぶっていたのかもしれない。自分は普通の子供ではない。頭がおかしいのかもしれない。たぶん、ヘンタイというものなのだろう。
「もうこんなことはやめよう。これっきりにしよう」
何度そう誓っても夜になるとついその行為をしてしまう自分がいて、終わるといつも激しい自己嫌悪を感じた。
しかし、ある日私は仲間を見つけた。
中学に入ってようやくクラスにも慣れた頃の出来事だった。
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